70デシベルの壁

2014.03.19 10:10|制度
以下、毎日新聞 より引用

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「ふざけたことはやめてくれませんか」。
7日の記者会見で佐村河内守氏が気色ばんだのは、
質問者が彼の難聴を疑い、手話を使わず唇を読んでと迫った時だ。
本当は聞こえてんだろ? そんな空気に胸が苦しくなった。

確かに、許しがたい人だ。
聴覚障害を売り物にし、広島や東日本大震災の被災者を利用し、
自分を慕った少女の心まで裏切った彼の言葉を信じるのは難しい。
でも、聴力については冷静に考えたい。

佐村河内氏の診断書によると聴力レベルは左耳が51.3デシベル、
右耳は48.8デシベルの中等度の感音性難聴。
世界保健機関(WHO)では聴覚障害者を
「聴こえる方の耳で聴力レベルが40デシベルより大きい」と定義しているから、
診断通りならば佐村河内氏も含まれる。
しかし日本では「両耳で70デシベル以上」と基準が厳しいため、
彼は身体障害者手帳の認定外。

WHOによると聴覚障害者は世界の人口の約5%。
日本の基準では人口のわずか0.3%。
生活に困難を抱える中等度難聴者の多くが、
日本では福祉サービスを受けられず放置されている。

今回の騒動で厚生労働省が聴覚障害の認定方法を見直す方針を表明したのを受け、
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は
「障害認定される人の範囲を狭めるのではなく、国際基準に沿ったものにしてほしい」
と要望書を提出した。

聴覚障害は目に見えず、周囲に理解してもらいにくい。
「話せるが聞き取れない」中途失聴・難聴の人たちは特にそうで、
佐村河内氏への「聞こえんだろ」という声に、
学校や職場で似たことを言われた悔しい経験を思い出し
「ますます周囲に分かってもらえなくなる」と案じている。

彼らの声に今、耳を傾けたい。
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