となりの障害-難聴になって 思い伝える「要約筆記」

2016.03.29 12:05|情報
以下、毎日新聞 より引用

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外見上の特徴がないため、難聴者は周囲の理解を得にくく、さまざまな壁に直面している。
誰もが暮らしやすい社会を考える連載「となりの障害」の難聴編に寄せられた読者の手紙などを参考に
難聴者を取りまく課題を追った。


中途失聴者で手話や、口の動きを読む「読話」が使えない人にとっては、
相手が話したことを素早く要約し、手書きやパソコンで打ち込んだ文字で表す要約筆記は、
社会参加のために欠かせない手段の一つだ。だが、一般的にはまだ、なじみが薄い。

大阪府の鈴木靖子さん(75)=仮名=は10年前、両耳に補聴器を付けた。
病を患って聴力がさらに落ち、障害者手帳も取得した。2年前、くじ引きで、住んでいる府営住宅の棟長になった。
初会合を前に自治会長に相談し、日ごろから利用する要約筆記者の派遣を住んでいる市に申し込んだ。

しかし、会合の前日、自治会役員の一人が「外部の人が入ると個人情報が漏れる」と反対。
「要約筆記者は守秘義務が課せられているから心配ない」と数時間話し合ったが、理解は得られなかった。

会合では、住民の苦情を共有したり、行事の計画を立てたりする。
毎回、約20人が参加するが、やりとりは全く聞き取れなかった。
ICレコーダーを買って録音を試みたが、資料の紙がこすれる音しかしない。
結局、毎月の会合で一度も意見を言わなかった。
「手話のように、要約筆記も、多くの人に理解してもらいたい」と悔しさをにじませる。

●手話が困難な人も

厚生労働省の2006年度の調査(複数回答可)によると、
聴覚障害者のうち、主に文字(筆談・要約筆記)で意思疎通を図っている人は全体の30・2%で、手話の18・9%を上回った。
特に病気や突発性難聴などによる中途失聴者や、難聴の高齢者は手話を覚えるのが難しく、文字に頼る人は多い。

11年からは、国が定めた84時間以上の養成カリキュラムに基づく講座を受け、
試験に合格した人が「要約筆記者」として自治体などに登録するようになった。
講座では、言葉をそぎ落とす訓練の他、通訳者の守秘義務や、個人情報についても数時間割いて学ぶ。

登録試験の問題作成などを行う「全国要約筆記問題研究会」の三宅初穂理事長は
「都市部では、企業や行政機関の研修会などで要約筆記を活用する場面が増えてきた。
 4月に障害者差別解消法が施行されると要請はさらに広がるとみられる」とした上で、
「個人での利用が少ない自治体もまだ多い。要約筆記者はしっかりと訓練を受けた専門職。
 コミュニケーションを保障する権利だと思って積極的に活用してほしい」と話している。

●受け入れ態勢を

職場や学校で自分が難聴であることを伝えたら−−。

受け入れてもらえるか不安になったり、職場で不利になることを恐れたりして、
障害について話すことをためらう難聴者は少なくない。

軽度難聴の薬剤師、宮谷真紀子さん(38)は、難聴であることを伝え、周囲の理解を得ながら病院などで働いてきた。
宮谷さんには「難聴について話してよかった」と思える忘れられない経験がある。

7年前、東京都内の上映会に参加。事前にスピーカーの位置や音の聞こえ方を調べた。
その上で、隣席の女性に難聴であることを伝えた。
映画の音声はよく聞こえたが、トークショーの会話が聞き取りづらかった。
困ったが、約50人の観客の中で、「自分一人のためにマイクを替えてと言えない」と黙っていた。

すると、隣席の女性が、主催者に「マイクを替えてほしい」と申し出た。
ショーは中断し、マイクが替わり、よく聞こえるようになった。
その後、女性から「あなたが話してくれたから、あの行動ができたのよ」と言われた。「話して良かった」と実感した。

しかし、「伝えて良かった」と思える経験ばかりではない。
シンポジウムなどの主催者に難聴と告げ、「要約筆記」などの情報保障を求めても、
「一人のために予算はかけられない」などとして、断られたことが何度もある。

過去に、難聴だと告げている同僚から
「普通に話すから、(難聴だったことを)忘れちゃうんだよ。カードをつけてよ」と言われ、驚いた。

同僚のひと言がきっかけで、「難聴について相手にわかりやすく伝えられているのか」と深く考えるようになった。
難聴者や医療従事者から聞き取りを進め、難聴者についての情報を集め始めた。

現在、宮谷さんは、難聴者らで作るグループ「クリアジャパン」を設立し、多くの難聴者と交流を深めている。

難聴者のカミングアウトについて、宮谷さんは「理解してもらったほうがよいと分かっていても、
過去に不利益を被った経験があると、積極的になれなくなる」と難聴者の思いを語る。
その上で、「難聴者が不利益を受けないよう、企業などで社会的な受け入れ態勢を整えていくことが求められている」と
指摘している。

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要約筆記

話し手が話す内容を要約し、文字にして伝えるコミュニケーション手段。
病院の受診、子どもの保護者面談に同行するなどして、横で話の内容を書いて伝える。
また、講演会や会議などではスクリーンに映し出すこともある。
1960年代に考案されたと言われ、2006年から手話通訳と同じように
自治体が福祉サービスとして原則、無料で派遣している。
厚生労働省によると登録試験に合格した要約筆記者は13年度末で3513人。
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