ろう者の祈り(2)バカじゃない。国語が苦手なだけ。

2017.03.21 13:21|情報
以下、朝日新聞DIGITAL より引用

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数年まえ、春。ひとりのろう者が、ろう学校から旅立とうとしていた。彼は希望に満ちていた。
ある中堅の会社に実習に行った時、こう言われていた。

「とっても君は素晴らしい。わが社初のろう者社員として入社してほしい」

ろう者の祈り(1)会社の飲み会は、ろう者を孤独にする

聴者が初めて自分を認めてくれた。彼は、そこに就職することを決めた。
両親は、「ろう者が働きやすい環境がある会社の方がいいんじゃない?」と心配した。
彼は、「社員のみなさんが優しいから大丈夫。ぼくは定年まで辞めない」と笑った。

彼は、小学3年生までは聴者と同じ学校に通った。先生からバカにされ、同級生からはイジメられ。
我慢できなくてろう学校にうつり、まじめに勉強した。得意科目は数学だ。

高等部を卒業した。桜の4月、自分をほめてくれたあの会社に入社、管理部門に配属された。

彼の希望のつぼみは、開花することなく枯れた。

あいさつの社内メールを出すと、「新入社員のくせに、何様だ」と冷たい視線を浴びた。
彼には、どこが悪いのか分からなかった。あとで、尊敬語などがなかったから、と知った。
尊敬語、丁寧語、謙譲語。これらの使い方は、彼の一番苦手とするところだ。

さらに、社員から彼に来るメールが、小学校低学年の子どもにあてたような文になった。
彼の出したメールの中に、へんな文があったのかもしれない。
彼は、「てにをは」など助詞の使い方にも自信がない。どこがどうおかしかったのか、だれも教えてくれない。

さらに、先輩たちは彼に早口で話した。彼は、口の形で何を言っているかを読む。
「少しゆっくり話して下さい」と頼むと、先輩たちは「もういいや」と顔をそむけた。

そして、仕事を任せてもらえなくなった。「その仕事は僕が責任を持ちます」と上司や先輩に言っても、「君はいいよ」。
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